F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は、第5戦中国GPについて聞いた。
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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第4戦】レッドブル育成プログラムの停滞と首脳陣の見込み違い
中国でのRBは、何かを間違って、競争力を発揮できなかった。でもいずれはそういうグランプリもあるだろうことは分かっていた。とにかくスプリント方式というのはチームに大きなストレスをかける。古き良き時代の予備予選とか、インディ500で33のグリッドを賭けて戦う予選とか、おそらくそれよりもプレッシャーは大きいだろう。今F1チームを運営していなくて本当によかった!
5年ぶりに走るトラックを、当時とは全く異なるF1マシンで走るというのに、マシンセッティングを行うセッションが1時間しかないなんて、どれだけ大変かを想像してみてほしい。その上、予告なしにターマックに変更がなされていたのだ。シミュレーターの値が理想より0.5パーセントずれていたとしたら、スプリント予選が始まる前に、基本的にその週末には希望は持てなくなる。
……もちろん、この話は若き角田の分析へとつながっていくのだから、口をはさまないでほしい。私はプロなのだ。私に任せて、黙って話を聞いていればいいのに、君ときたら、毎回毎回……。ええと、どこまでいったかな。つまり、RBが中国GPに向けた準備のなかで、少し計算を間違えてしまい、その後、立て直すことができなかったという話に持っていきたかったわけだ。さらに角田にとって上海でレースをするのはこれが初めてだった。彼は、フリープラクティスの初めから、決勝で無謀なケビン・マグヌッセンによってリタイアさせられるまで、全くの手探り状態だった。
1年前に裕毅が週末をこういう形で終えなければならなかったとしたら、彼はどういう態度を示したか。おそらくベビーカーからおもちゃをすごい勢いで投げ捨てて、放送できないような言葉をがなりたてたはずだ。怒り心頭でレース後のインタビューで自分の仕事を放棄し、短くて情報量のないコメントを残しただけで、その場を立ち去っただろう。
しかし今年の角田は違った。各セッション後の角田のコメントを聞いて、私はうれしい驚きを覚えた。上海には行かなかったので、テレビを通して彼のコメントをすべて聞いたのだが、マイクを前に彼が話すたびに、その冷静さに感心させられた。
マシンに何か問題があると考えていた彼は、それをはっきりと伝え、今苛立ちを感じているが次のセッション、次のレースのために何をしなければならないかに常に集中していると語っていた。
インタビューに応じる彼には、ヒステリックな行動も、不適切な言葉もなく、自分のマシンに何が欠けているか、チームには週末の残りにどういう運営をしてほしいかについて、驚くほど分析的な説明をした。ひと言で言えば、若いドライバーにしては極めて成熟した振る舞いだった。角田が、マシンに乗っていない時でも、ひとりの人間として、レーシングドライバーとして成長し、困難な時期にチームの支えになる、頼れる存在になったことの証しだ。
中国GPの角田について、素晴らしいリザルトとポイントをテーマに語ることができれば、もちろんその方が良かったけれど、2024年のF1は極めて熾烈だ。チームとドライバーが週末をほぼ完璧に過ごすことができなければ、あっという間に後方に落ちてしまう。
それが中国でのRBに起きたわけだ。しかし角田は冷静さと建設的な姿勢を保ち、競争力が不足したマシンでもミスをすることなく、よい走りをした。まさにチームが彼に望むことすべてをやってのけたといえるだろう。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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